Oにて、
腰掛や奇妙な寝椅子等、暗い四隅《よすみ》に
蹲《(うづく)》まる。食器戸棚はあくどい慾に
満ちた睡気をのぞかせる歌手《うたひて》達の口を有《(も)》つ
いやな熱気は手狭《てぜま》な部屋を立ち罩《こ》める。
お人好し氏の頭の中は、襤褸布《ぼろきれ》で一杯で、
硬毛《こはげ》は湿つた皮膚の中にて、突つ張るやうで、
時あつて、猛烈|可笑《(をか)》しい嚏《(くさめ)》も出れば、
がたがたの彼氏の寝椅子はゆれまする……
★
その宵、彼氏のお臀《しり》のまはりに、月光が
光で出来た鋳物の接合線《つぎめ》を作る時、よく見れば
入り組んだ影こそ蹲《しやが》んだ彼氏にて、薔薇色の
雪の配景のその前に、たち葵《(あふひ)》かと……
面白や、空の奥まで、面《つら》はヴィーナス追つかける。
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坐つた奴等
肉瘤《こぶ》で黒くて痘瘡《あばた》あり、緑《あを》い指環を嵌めたよなその眼《まなこ》、
すくむだ指は腰骨のあたりにしよむぼりちぢかむで、
古壁に、漲る瘡蓋《かさぶた》模様のやうに、前頭部には、
ぼんやりとした、気六ヶ敷さを貼り付けて。
恐ろしく夢中な恋のその
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