閧ト其れよりぞ
磨かれし大鍋ごとき陽の光
偏頭痛さへ惹起《ひきおこ》し、眼《まなこ》どろんとさせるにぞ、
そのでぶでぶのお腹《なか》をば布団の中にと運びます。

ごそごそと、灰色の布団の中で大騒ぎ、
獲物《えもの》啖《(く)》つたる年寄さながら驚いて、
ぼてぼての腹に膝をば当てまする。
なぜかなら、拳《こぶし》を壺の柄と枉《(ま)》げて、
肌着をばたつぷり腰までまくるため!

ところで彼氏|蹲《しやが》みます、寒がつて、足の指をば
ちぢかめて、麺麭《(パン)》の黄を薄い硝子に被《き》せかける
明るい日向にかぢかむで。
扨《(さて)》お人好し氏の鼻こそは仮漆《ラツク》と光り、
肉出来の珊瑚樹かとも、射し入る陽光《ひかり》を厭ひます。

     ★

お人好し氏は漫火《とろび》にあたる。腕拱み合せ、下唇を
だらりと垂らし。彼氏今にも火中に滑り、
ズボンを焦し、パイプは消ゆると感ずなり。
何か小鳥のやうなるものは、少しく動く
そのうららかなお腹《なか》でもつて、ちよいと臓物みたいなふうに!

四辺《あたり》では、使ひ古るした家具等の睡り。
垢じみた襤褸《ぼろ》の中にて、穢《けが》らはし壁の
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