カま》に浸してしまひます、
彼女は心が血を流し、声も立て得ぬ憤激が
捌《は》け口見付ける強烈な夜《よる》を望んでゐたのです。
扨|夜《よる》は、彼女を犠牲《にへ》としまた配偶となし、
その星は、燭火《(あかり)》手に持ち、見てました、
白い幽霊とも見える仕事着が干されてあつた中庭に
彼女が下り立ち、黒い妖怪《おばけ》の屋根々々を取払ふのを。
※[#ローマ数字6、1−13−26]
彼女は彼女の聖い夜《よる》をば厠《(かはや)》の中で過ごしました。
燭火《あかり》の所、屋根の穴とも云ひつべき所に向けて
白い気体は流れてゐました、青銅色の果《み》をつけた野葡萄の木は
隣家《となり》の中庭《には》のこつちをばこつそり通り抜けるのでした。
天窗は、ほのぼの明《あか》る火影《あかり》の核心
窓々の、硝子に空がひつそりと鍍金してゐる中庭の中
敷石は、アルカリ水の匂ひして
黒い睡気で一杯の壁の影をば甘んじて受けてゐるのでありました……
※[#ローマ数字7、1−13−27]
誰か恋のやつれや浅ましい恨みを口にするものぞ
また、潔い人をも汚すといふかの憎悪《にくしみ》が
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