フをお包みなされたといふ下著をみては吃驚《(びつくり)》するのでありました。

それなのになほも彼女は願ふ、遣瀬なさの限りにゐて、
歔欷《(すすりなき)》に窪んだ枕に伏せて、而も彼女は
至高のお慈悲のみ光の消えざらんやう願ふのであつた
扨|涎《よだれ》が出ました……――夕闇は部屋に中庭に充ちてくる。

少女はもうどうしやうもない。身を動かし腰を伸ばして、
手で青いカーテンを開く、
涼しい空気を少しばかり敷布や
自分のお腹《なか》や熱い胸に入れようとして。

     ※[#ローマ数字5、1−13−25]

夜中目覚めて、窓はいやに白つぽかつた
灯火《ひかり》をうけたカーテンの青い睡気のその前に。
日曜日のあどけなさの幻影が彼女を捉へる
今の今迄|真紅《まつか》な夢を見てゐたつけが、彼女は鼻血を出しました。

身の潔白を心に感じ身のか弱さを心に感じ
神様の温情《みなさけ》をこころゆくまで味ははうとて、
心臓が、激昂《たかぶ》つたりまた鎮まつたりする、夜を彼女は望んでゐました。
そのやさしい空の色をば心に想ひみながらも、

夜《よる》、触知しがたい聖なる母は、すべての若気を
灰色の沈黙《し
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