Sに
諸天使や諸所のエス様や聖母様を勘定しはじめました、
そして静かに、なんとも云へぬ喜びにうつとりするのでありました。

神様!……――羅典《(ラテン)》の末期にありましては、
緑の波形《なみがた》ある空が朱《あけ》色の、
天の御胸《みむね》の血に染《し》みた人々の額を潤ほしました、
雪のやうな大きな麻布は、太陽の上に落ちかゝりました!――

現在の貞潔のため、将来の貞潔のために
少女はあなたの『容赦《みゆるし》』の爽々《すがすが》しさにむしやぶりついたのでございますが、
水中の百合よりもジャムよりももつと
あなたの容赦《みゆるし》は冷たいものでございました、おやシオンの女王様よ!

     ※[#「IIII」、82−1]

それからといふもの聖母ははや書物《ほん》の中の聖母でしかなかつた、
神秘な熱も時折衰へるのであつた……
退屈《アンニユイ》や、どぎつい極彩色や年老いた森が飾り立てる
御容姿《みすがた》の数々も貧弱に見え出してくるのであつた、

どことなく穢《(けが)》らはしい貴重な品の数々も
貞純にして水色の少女の夢を破るのであつた、
又脱ぎ捨てられた聖衣の数々、
エス様が裸
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