z等まるまり、身動きもせぬ、
真ツ赤な気孔の息吹《いぶき》の前に
胸かと熱い息吹の前に。
メディオノーシュ(1)に、
ブリオーシュ(2)にして
麺麭を売り出すその時に、
煤けた大きい梁の下にて、
蟋蟀《(こほろぎ)》と、出来たての
麺麭の皮とが唄《(うた)》ふ時、
窯の息吹ぞ命を煽り、
襤褸《(ぼろ)》の下にて奴等の心は
うつとりするのだ、此の上もなく、
奴等今更生甲斐感じる、
氷花に充ちた哀れな基督《エス》たち、
どいつもこいつも
窯の格子に、鼻面《はなづら》くつつけ、
中に見えてる色んなものに
ぶつくさつぶやく、
なんと阿呆らし奴等は祈る
霽《(は)》れたる空の光の方へ
ひどく体《からだ》を捩じ枉《(ま)》げて
それで奴等の股引は裂け
それで奴等の肌襦絆
冬の風にはふるふのだ。
註(1)断肉日の最終日にとる食事。
(2)パンケーキの一種。
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谷間の睡眠者
これは緑の窪、其処に小川は
銀のつづれを小草《をぐさ》にひつかけ、
其処に陽は、矜《(ほこ)》りかな山の上から
顔を出す、泡立つ光の小さな谷
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