つて来て、私のまはりに羽搏《(はばた)》いて
私の頭《かうべ》を取囲み、我が双の手を
草花の鎖で以て縛《いまし》めた。又、顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》を
薫り佳き桃金嬢もて飾り付け、さて軽々《かろがろ》と私を空に連れ去つた
彼女らは雲々の間《あひだ》を抜けて、薔薇の葉に
仮睡《まどろ》みゐたりし私を運び、風神は、
そが息吹《いぶ》きもてゆるやかに、我がささやかな寝台《とこ》をあやした。
鳩ら生れの棲家に到るや
即ち迅き飛翔もて、高山《たかやま》に懸かるそが宮殿に入るとみるや、
彼女ら私を打棄てて、目覚めた私を置きざりにした。
おお、小鳥らのやさしい塒《ねぐら》!……目を射る光は
我が肩のめぐりにひろごり、我が総身はそが聖い光で以て纏はれた。
その光といふのは、影をまじへ、我らが瞳を曇らする
そのやうな光とは凡《おほよ》そ異《ちが》ひ、
その清冽な原質は此の世のものではなかつたのだ。
天界の、それがなにかはしらないが或る神明《しんめい》が、
私の胸に充ちて来て大浪のやうにただようた。

やがて鳩らはまたやつて来た、嘴々《くちぐち》に
調べ佳き合唱を、指《および》
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