みずが、たくさんうごめいていた。土の柔く盛り上っている所を棒でさぐると、南京玉ほどの土蜘蛛が、ガサガサと音を立てて群り散った。こんな遊びに夢中になっている中に、やがて二日目の夜が訪れてきた。
 庭の奥や、聯隊の土壁が黒々と深い暗黒にとざされてくると、私も姉も怖しくなって、
「今夜は二階に寝ないよ」
 と言って床を敷いてもらうまで、書生の徳吉さんや、母のまわりにまとわりついていた。二階からかや[#「かや」に傍点]が私たちの夜具をもってきたとき、昨夜の老婆の水のしたたりや、血痕が残ってはいまいかと、あっちこっちとしきりに触ってみたが、綺麗な花模様のフンワリとした布団には、何の変化も見られなかった。
 私たちは、母たちと混って寝た。母がいると思うと、不安の気持は少しも起らず、私はいつのまにかぐっすりと気持ちよく寝こんだ。ところが、真夜中に部屋の中が妙に騒がしいので、ふと眼を覚ましてみると、父の青ざめた顔を中心に、家中の者が車座に集り、なにかしきりと喋べり合っていた。
「ばあさんがでた! ほんとだ! ほんとだ! ぬれねずみのばあさんだ!」
 父の声だ。私もいつか寝具から脱けだすと、こっそり車座
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