飛び出すトニー・谷の司会で、雪村いづみがクリクリした新鮮な姿で颯爽と現われた時には、早や客席は爆発的で、
「これよこれよ私の好きないづみちゃアーン、シッカリー」
とたんにポッポちゃん、あまり興奮したので椅子から落ちてしまった。
「はずかしいよポッポちゃん、しっかりしてくれよ」
「うるさいわよ、私のレッスンの時間の中でも一番大事な時なのよ」
と最早、無我夢中、いづみ熱に患されたポッポちゃんは手のつけようがない。表情もたくみに歌い出す雪村いづみに涙をこぼし、身もだえする人もいる。彼女は彗星の如く現れたジャズ・シンガー、曲は彼女が幸運を引き当てた「想い出のワルツ」、どよめきと共に次の幕が切って落され、ジャズのナンバーワンと絶讃をあびている、ジョージ・川口とビッグ・フォアー、なかでも太鼓のジョージ・川口の至芸には思わず息をのんだしだい。ボンゴス、トムトム、スネアー、トーベース、シンバル、ハイバイツと九つに近い太鼓を、まるで神わざの如くあつかうありさまは、まるで狂人の如く、獅子の如く、さしもに広い舞台が、たった一人のジョージと太鼓の轟きに一ぱいあふれ、ベースの小野満、テナーサックスの松本英彦
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