づかしいのだ。
もう一歩つき入つて、なぜ考へなかつたか。悪いところを、悪いとするだけぢやあ何もならないんだ。肝心なのはその中で、どう、よりよく生きるかといふことだ。
私が転校はいやだと云つたとき、お母様は、「でも学校を代つていろんな善さをみつけ出すのも無意義ぢやあないんですよ」とおつしやたツけ。だのに、私はあの転校をほんとに故意に無意義にしてしまつた。残念だ。全く残念だ。あのとき、もう一寸と心すればS校のよさもわかつたらうに。あの時の自分を考へると、お友達に顔をあはせるのすら恥かしい。
自らを不愉快にし、自ら無駄にした一年間がすぎて、私は、本願成就とばかり大よろこびで名古屋を逃げるように東京へ帰つて来た。
引越し騒ぎが一先づ落着いて、さて、なつかしの女子大や如何に? と様子をきくと、今の所、欠員はないとのこと。しかし、まあ一学期だけでも居たことのあるお陰で、吉田先生や伊藤先生が大変お骨折り下さつて、「欠員はないけれども復校させて上げませう」といふことにして下さつた。しかし、只ぢやあない。国、英、数、自然研究の簡単な試験がある、といふ。私は又々苦しまねばならなかつた。
一年の転
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