く反対するやうな子だつたから、この定期試験などには極度に憤慨した。一人で憤慨してみるが、大勢如何ともなしがたく、(実際バカらしい、こんなの……)と思ひつゝ長い廊下を、往つたり来たりして、天井を睨みながら、大声で暗誦をやつたものだ。暗誦はやさしいから好きだつたのだが、かうして何から何まで暗誦してゐるうちに、その中味が実に空虚な味気ないものだといふことを知つた。
女子大では、大好きだつた英語や、歴史や、地理も大きらひになつてしまつた。
学校も勉強も全くつまらない。殊に代数がいやだつた。代数そのものは好きだつたが、先生がいやなんだ。
私が転校試験を受けたときに、理科の口頭試問をやつた先生――そして、会ふや否や
「ヘツヘツヘ。あなたが局長さんのお嬢さんですか、さうですか、ヘツヘ、どちらの学校……エ? 女子大の附属、さうですか、どうりでヘツヘツヘ……学校は東京に限りますな」とつまらぬことばかりしやべる――先生なのだ。先生は先生として敬ふのが生徒の道ではあるけれど、この先生だけはあふのもゾツとするほどいやだつた。時間中、前にもきいたのに、「どこまでやりました? オゝこゝまで……やつぱり東京は
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