たいほど口惜しかつた。よつぽど来学期うけなほさうかと思つた。しかし、折角、吉田先生があんなにお骨折り下さつたのに、今更どうすることも出来ず、泣きね入りに、中組に入つた。
 入つてからも、私は妙に沈んでゐた。「当りまへなら、とても入れないところを」それは本当だ。私は決して井上先生の、あのお言葉が嘘でないことをみとめる。しかし、あのお言葉が私の心に暗い影をおとしてしまつたことも事実である。
 全く、あれは私にとつて最大の苦痛であつた。あの一言が忘れられないために、どんなに私は辛い苦しい悲しい思ひをしたか。どんなに、あの一言が私の心を傷つけたことか。それはとても想像以上のものがある。私はつく/″\辛いと思つた。情ないと思つた。始終、何か悪いことでもした人みたいに、ビクビクと人の目をうかゞふ様になつた。吉田先生や伊藤先生や井上先生の前に出ると、どうしても堂々と、まともにみられない気がした。私はひがんでゐたんだらうか。それは卑屈であつたらうか。……とにかく、この苦い経験から私は、どんなに自分に都合のいゝことであつても、正しい順序をふまないでは却つて、苦しい思ひをしなければならないのだといふことを
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