を本の中にみつけたとき、私はおかしくて/\笑ひが止らなかつた。骨の名前や血の循環なんかは忘れても、これだけは終生忘れないと思ふ。

    タマシヒ

 やつぱり三年位のときだつたんだらう。冬のある日、七、八人のお友達と校舎の板かべによつかゝつて日向ぼつこをしてゐた。私たちは遊びにあきると、よくさうやつて日向ぼつこをするのだ。
 誰だつたか思ひ出せないが、そのとき急に眼をつぶつて、指で眼のはしを軽くおさへてグリ/\とまはす様なことをし始めた。変なことをしてるな、とみてゐると、急にそのお友達が、スットンキョウな声をあげて、
「あ、あゝ、みえる/\」といつた。そして向き直ると、「ね、かうやつてごらんなさい」と又グリ/\としてみせた。
 私たちも眼をつぶつてやつてみた。別にどうもならない。
「なーに? 何が見えるの?」
「ほら/\、見えるぢやないの、黄色い輪が……」
「どこに? 見えやしないわ」
「うゝん。そら眼をつぶつたらね。つぶつたまんま、グリ/\してるのと反対の方へ横眼をつかふのよ。そして……グリ……グリグリ……ネ、見えたでしよ、黄色い輪が……ね」
「あゝ、あゝ、見えた、見えたわよ。グ
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