と、途端に、「ワーツ!」と家中の人がお腹をかゝえて笑ひ出してしまつた。おかしいことには節ちやんも、小ッちやなヨーベーさへ大笑ひに笑ふのである。笑はないのはネコに私位のもの。
「アッハッハッハ。ノーミソが、アハ……くさつたんだなんて、アッハッハッハ、あー、くるしい」
「ワハハ……バカ! そんなにノーミソが腐つてたまるかい、ワハハ……」
「おーくるしい、お腹がいたくなつちやひましたよ。ハッハッハ」
 涙を浮べておかしがつてゐる。
「だつて、千代ちやんが教へてくれたのよ。渡辺千代子さんが……」と抗議を申し込んだが、あんまり皆が笑ふので、これは嘘だつたんだなと私もおかしくなつて笑ひながら、
「ぢやあ何なの、ノーミソが腐つたのでなきや、何なの?」きいたが、誰も笑ふばかりで教へてくれなかつた。
 そして問題はノーミソの腐つたのではないといふことがわかつただけで、又も迷宮入りとなつてしまつた。

 あれが多分小学校の三、四年のときだらうから、三、四、五、六、一、二、三、四と実に八年目に私は生理衛生で、鼻汁は鼻腔内粘液が空気の出入りなどでよごれたものなり、といふ事を知つた。「ハナは……」といふこの文句
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