中に阪神地方は二度目の風水害におそはれ、毎日毎日いやな雨がびしよ/\とふりつゞき、不気味な風が吹きあれた。お家はすごい高台だから水の心配はなし、昼間は遊びにとりまぎれて、さほど淋しいとも思はなかつたが、夜になると必ずあばれ出す雷には閉口した。
 雨戸がないからガラス戸をとほしてピカツ、ピカツ/\ツと青白い電光がお部屋中を気味悪くてらす。(光ツた!…)と思ふや否や、パリ/\/\ツといふ様なものすごい音がして、ズーンと地ひゞきがする。只でさへ大きらひな雷だが、山の雷だから、そのものすごいことお話にならぬ。コワいのと、さびしいのとで、私はねむるどころのサワギではない。毎晩、毎晩フトンを頭からかぶつては、桑原々々で夜あかしをする。平気でねられる芳子ちやんが羨しくてならなかつた。
 淋しさの方はもつと猛烈であつた。
 それでなくとも甘えツ子の内辨慶の私へ、大あらしに山の雷と来ちやあ、いかにこゝがすみよくても、落着いてゐられないのもむりではなからう。
 私がジリ/\してゐるのに嵐は中々立ち去らず、私は悶々とした日々を送つてゐた。
 叔母様も雨の合間々々をみては方々案内して下さつたが、或る日、私は思
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