お泊り
平山千代子
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【テキスト中に現れる記号について】
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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名古屋へ行つた年の夏だから、女学校一年の夏である。
東京へいらしつたお帰りに、すみ子叔母様が名古屋へお立寄りになつた。
そしてお帰りに「千代ちやん一しよに行かない?」とおつしやつた。
「帰りは芳子と一しよに帰ればいゝから……」と云つて下さつたし、神戸のお家でいつかピアノを弾かして頂いたことを思ひ出し、何の気なしに「行く」と云つてしまつた。
ほんの一時の出来心ではあつたが、ピアノがひける嬉しさに私は喜んで汽車に乗つた。名古屋から神戸までである。直に着いてしまつた。
しかし途中は、その少し前にあつた風水害で土がうづ高くつまれてをり、また水びたしの所などもあつて、少し私に里心をおこさせた。お迎への伯父様や、芳子ちやん、信ちやん、康ちやんと神戸のお家についたのは、もう夕方に近かつた。
着いて荷物もおちつけて、坐つてみると又なんとさみしいのであらう。
叔母様と芳子ちやんはお台所、叔父様は新
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