気の強いみの[#「みの」に傍点]には似合はず、落着いて分別しきつた態度だつた。
おばあ様と、節ちやんと私とはリヤカーにつきそふて家へ向つた。
ガタ/\する砂利道では、傷に響くのを恐れて、二人で持ち上げてやつたりした。
いろんな思ひ出をもつたあの青ペンキの「美濃の家」の前へ下ろされてからのみのは、やつと居心地がよくなつた様に、何度も目を細めて私を見たり皆を見たりした。
直ぐ遠藤さん(獣医さん)へ電話をかけたが、生憎お留守だとのこと。正源寺の小父さんは目白の方に獣医さんがありますからと、自転車で方々かけ廻つて下さつた。
みの[#「みの」に傍点]はいかにも苦しさうで、水を欲しがつてゐる様子は誰にもわかる。
やりたいのは山々だが、せめて獣医さんが来る迄と、水の皿をとりよせようとして止めたこと幾度か……それも、もしかして助かるかもしれない、といふかすかな望みをすて切れない未れんからであつた。誰もが、
「あゝ、もうこれは駄目ですね。助かりませんね」と云つた。
私も本当は心の中では駄目だなあ、とても助かりつこないなあ、と思つてゐた。
けれどやつぱりどこかで、助かるかもしれない、なほる
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