「みの」の死
平山千代子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)頴川《えいせん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ゑみや[#「ゑみや」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)どうしたの/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 気狂ひの様になつて帰つて来たゑみや[#「ゑみや」に傍点]から、「みのが轢かれた」ときいて、私が飛び出して行つたとき、みの[#「みの」に傍点]は黄バスのガレーヂの傍に倒れて、かなしい遠吠えをしてゐた。
「みの! みの!」私は人前もかまはず、さう呼んで、冷いコンクリートに膝を突いてしまつた。
「みの! どうしたの/\」
 美濃は私の声をきくと遠吠えをやめて、チラと私を見上げ、眼を細くして満足の表情を示したが、もう尻尾はふれなかつた。
 見ると腰を轢かれたらしく、後足が少し裂けて、白いものが出てゐた。――その時は分らなかつたが、白いのは折れた腰骨の端であつた。
 しかし、そのわりに血は出ず、ただ傷口と口腔から、血を出してゐたが、あまりみぐるしい程ではない。私が
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