大事な方のために尽して上げることが出来れば、それが慰めにもなりませう。あなたが唯お友達になつて下されば、わたくしどんなにか為合《しあは》せでせう。もう恋なんと云ふことは、生涯駄目かと思つてゐます。」かう云ふ事を言つてゐる間、女は僕に多少の親みをすることを許した。その様子が余り冷澹ではなささうなので、あんな事を言つても、又思ひ返すこともあるだらうと、僕は思つた。
未来に楽しい事があるだらうと云ふ見込は、幸福の印象をなす筈だから、僕はジユリエツトとした此散歩の土産に、さう云ふ印象を持つて帰らなくてはならないのだ。実際ジユリエツトがいつか僕の情人になつてくれるだらうと云ふ想像は、僕には嬉しかつた。僕は度々スクタリで話をした時の事を思ひ浮べて見た。高い糸杉の木、倒れてゐる柱形の墓石、僕に手を握らせて微笑《ほゝゑ》んでゐる若い女の顔。こんな物が又目に浮ぶ。併しどうもその場合に、僕は局外者になつてゐるやうでならない。詰まり秘密らしく次第にその啓示《けいし》の期の近づいて来る、僕の生涯の隠れた目的は、この目に浮ぶ物の外にあるのだ。
かう云ふ妙な精神状態を、僕がしてゐるうちに、ブラウン夫婦がテラピ
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