たちは日本人めづらしく、伯爵夫人のわが軍服|褒《ほ》めたまふ言葉の尾につきて、「黒き地に黒き紐《ひも》つきたれば、ブラウンシュワイヒの士官に似たり、」と一人いへば、桃色の顔したる末の姫、「さにてもなし、」とまだいわけなくもいやしむいろえ包までいふに、皆をかしさに堪《た》へねば、あかめし顔を汁《ソップ》盛れる皿の上に低《た》れぬれど、黒き衣《きぬ》の姫は睫《まつげ》だに動《うごか》さざりき。暫《しば》しありて穉《おさな》き姫、さきの罪|購《あがな》はむとやおもひけむ、「されどかの君の軍服は上も下もくろければイイダや好みたまはむ、」といふを聞きて、黒き衣の姫振向きて睨《にら》みぬ。この目は常にをち方にのみ迷ふやうなれど、一たび人の面《おもて》に向ひては、言葉にも増して心をあらはせり。いま睨みしさまは笑《えみ》を帯びて呵《しか》りきと覚ゆ。われはこの末の姫の言葉にて知りぬ、さきに大隊長がメエルハイムのいひなづけの妻ならむといひしイイダの君とは、この人のことなるを。かく心づきてみれば、メエルハイムが言葉も振舞も、この君をうやまひ愛《め》づと見えぬはなし。さてはこの中《なか》はビュロオ伯夫婦もこ
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