I」に傍線]は、高趺《たかあぐら》かきて面白げに饒舌《しやべ》り立てたり。(注。モンテ、ピンチヨオ[#「モンテ、ピンチヨオ」に二重傍線]には公園あり。西班牙《スパニヤ》磴《いしだん》、法蘭西《フランス》大學院よりポルタ、デル、ポヽロ[#「ポルタ、デル、ポヽロ」に二重傍線]に至る。羅馬の市の過半とヰルラ、ボルゲエゼ[#「ヰルラ、ボルゲエゼ」に二重傍線]の内苑とはこゝより見ゆ。)十指墮ちたるフランチア[#「フランチア」に傍線]は盲婦カテリナ[#「カテリナ」に傍線]が肩を叩きて、「カワリエエレ、トルキノ」の曲を歌へり。戸に近き二人三人は蔭になりて見えわかず。話は我上なり。我胸は騷ぎ立ちぬ。あの小童《こわつぱ》物の用に立つべきか、身内に何の畸形《かたは》なるところかある、と一人云へば、をぢ答へて。聖母は無慈悲にも、創一つなく育たせしに、丈《たけ》伸びて美しければ、貴族の子かとおもはるゝ程なりといふ。幸《さち》なきことよ、と皆口々に笑ひぬ。瞽《めしひ》たるカテリナ[#「カテリナ」に傍線]のいふやう。さりとて聖母の天上の飯を賜《たま》ふまでは、此世の飯をもらふすべなくては叶はず。手にもあれ、足にも
前へ 次へ
全674ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング