セき》に登りて世界の四極《よものはて》を見たり。曩《さき》に拿破里に在りし時、獨逸の士官等の、瑞西《スイス》の山水を説くを聞き、一たび往いて觀んことを願ふこと漸く切なるに、汽船もて達し易きジエノワ[#「ジエノワ」に二重傍線]を距ること遠くもあらぬを知れば、意を決して往くことゝしつ。シヤムニイ[#「シヤムニイ」に二重傍線]の谿《たに》をも渡りぬ。モンブラン[#「モンブラン」に二重傍線]の頂にも、ユングフラウ[#「ユングフラウ」に二重傍線]の頂にも登りぬ。現《げ》にユングフラウ[#「ユングフラウ」に二重傍線]は「ベルラ、ラガツツア」(美少女)なれど、かくまで冷かなる女子は復た有るべからず。これよりはジエノワ[#「ジエノワ」に二重傍線]に往きて、約束せし妻とその父母とを訪《とぶら》はんとす。もはや眞面目なる一家のあるじとならんも遠からぬ程なるべし。汝若し我が昔日の生涯を語らず、彼の馴るゝ小鳥の事、愛らしき歌妓の事などを祕せんと誓はゞ、われは汝を伴ひてジエノワ[#「ジエノワ」に二重傍線]に往くべし。いかに、三日の後に我と共に發足せずやといひぬ。われ。否々、我は明日《あす》此地を立たんとす。ベル
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