ト導者の言を記せり、年の頃は三十ばかりなるべし。胸には拿破里《ナポリ》の勳章二つを懸けたり。此旅人の迫持《せりもち》の石柱を仰ぎ見るに及びて、我はそのベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]なるを識《し》りぬ。彼方も亦直ちに我を認め得つとおぼしく、何の猶豫《ためら》ふさまもなく、我側に歩み寄りて我胸を抱き、めづらしきかな、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]、われ等の相別れし夕は賑やかなりき、われ等は祝砲をさへ放ちたり、されど想ふに我等の友情は舊《もと》の如くなるべしといひぬ。我は肌《はだへ》の粟《あは》を生ずる心地しつゝ、纔《わづか》に口を開きて、さてはベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]なりしよ、圖《はか》らざりき、おん身と伊太利の北のはてなる、アルピイ[#「アルピイ」に二重傍線]山の麓にて相見んとはと答へつ。
 我等は共に歩みて新劇場の邊に往き、轉じて市《まち》の廓《くるわ》に入りぬ。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は道すがら語りていふやう。汝は此地を指してアルピイ[#「アルピイ」に二重傍線]山の麓といへり。われはまことのアルピイ[#「アルピイ」に二重傍線]の巓《いた
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