`ヤタ」に傍線]が魂の聖母《マドンナ》の御許《みもと》に在り、その影の我胸中に在りて、此石の下なる塵のわが執着すべき價あるものにあらざるを知る。されどわれは猶低徊して此方數尺の地を去ること能はざりき。市長《ボデスタ》の家に往きては一家の人々とポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]との餞宴《せんえん》を受けたり。市長は三鞭酒《シヤンパニエ》の盃を擧げて別を告げ、ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]はめぐる車の云々《しか/″\》といふ旅の曲と、自由なる自然に遊ぶ云々といふ鳥の歌とを唱ひぬ。ロオザ[#「ロオザ」に傍線]は、君若し妻を娶《めと》り給はゞ、偕《とも》に我家に來給へ、我は君が物語の中なる彼|亡人《なきひと》を愛する如く、君の伴ひ來給はん其人をも愛せんといひ、マリア[#「マリア」に傍線]は唯だ、健《すこや》かに樂しげにて、又我家をおとづれ給へといひぬ。
 ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]は例の「ゴンドラ」の舟にて、フジナ[#「フジナ」に二重傍線]まで送らんとて、我と共に立出づれば、ロオザ[#「ロオザ」に傍線]とマリア[#「マリア」に傍線]とは出窓に立ちて、紛※[#巾+兌]《てふき》を打振りぬ。
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