ハに臨みてポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]は聲高く笑ひつゝ、許嫁《いひなづけ》の女|極《き》まらば、彼約束を忘るなといひぬ。われは、けふさる戲言《ざれごと》いふことかはと戒《いまし》めつゝも、心の中にその笑顏の涙を掩ふ假面《めん》なるをおもひて、竊《ひそか》に友の情誼に感じぬ。
車は情なくして走り、一|堆《たい》の緑を成せるブレンタ[#「ブレンタ」に二重傍線]の側を過ぎ、垂楊の列と美しき別業《べつげふ》とを見、又遠山の黛《まゆずみ》の如きを望みて、夕暮にパヅア[#「パヅア」に二重傍線]に着きぬ。聖《サン》アントニウス[#「アントニウス」に傍線]寺の七穹窿は、恰も好し月光に耀けり。柱列の間には行人|絡繹《らくえき》として、そのさまいと樂しげなれども、われは獨り心の無聊《ぶれう》に堪へざりき。
白晝《まひる》となりてより、我無聊は愈※[#二の字点、1−2−22]甚だしければ、又車を驅りてこゝを立ち、一の平原に入りぬ。緑草の鬱茂せるさまはポンチニイ[#「ポンチニイ」に二重傍線]の大澤《たいたく》に讓らず。瀑布の如くなる大柳樹は古塚を掩《おほ》ひ、所々に聖母《マドンナ》の像を安じたる贄卓《
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