」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]みし菫の花束と、ペスツム[#「ペスツム」に二重傍線]祠の圓柱とを憶ひ起すことを禁ずること能はざりき。話頭は轉じて自然の美に入り、ロオザ[#「ロオザ」に傍線]は拿被里《ナポリ》の山水の景の慕はしさを説き出せり。われはこの好機會を得て、ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]を去る意を洩しつ。そは思ひも掛けぬ事かなとロオザ[#「ロオザ」に傍線]訝《いぶか》れば、さては最早再び此地には來給ふまじきかとマリア[#「マリア」に傍線]氣遣ふさまなり。否々、ミラノ[#「ミラノ」に二重傍線]まで往かば、又此地を經て羅馬に還らんとこそ思ひ候へと我は答へつれど、實はまだこゝを立ちていづ方に往かんとも思ひ定めざりしなり。
 わがヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に別るゝ涙を見せしは、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が墓とマリア[#「マリア」に傍線]が居間とのみなりき。墓に詣でゝは、石上に殘れる輪飾《わかざり》の一葉を摘みて、夾袋《けふたい》の中に藏《をさ》めつ。われは此石の下に、唯だ一團の塵を留むるのみなるを知る、アヌンチヤタ[#「アヌン
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