閨B岸區《リド》の漁者の遺族は我がために作りてポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]に托し、ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]はマリア[#「マリア」に傍線]にあづけ置きぬ。ある日マリア[#「マリア」に傍線]は我が往きて訪ふを待ちて、美しく愛らしきものならずやと云ひつゝ我手にわたし、ロオザ[#「ロオザ」に傍線]夫人は傍より、他日おん身の許嫁《いひなづけ》の妻に掛けさせ給ふべき品なり、作りし人もその心ありしなるべしと詞を添へつ。われは料《はか》らずも眉を蹙《せば》めて、我に許嫁の妻なし、未來にも亦さる人なからんと叫びぬ。マリア[#「マリア」に傍線]の面には失望の色をあらはせり。そはこの贈《おくりもの》を取次ぎて我を悦ばしめんことを期《ご》せしが故なり。われは手に瓔珞《くびたま》を捧げて、心にこれをマリア[#「マリア」に傍線]に與へんことを願ひぬ。マリア[#「マリア」に傍線]の顏の紅を潮《さ》せしは、我心を忖《はか》り得たるにやあらん、覺束《おぼつか》なし。
末路
とある夕わが爲換金《かはせきん》を取扱ふ商家を尋ねしに、主人の妻のいふやう。近頃はおん身の來給ふこと稀になりぬ。そは市長《ボ
前へ
次へ
全674ページ中601ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング