フを聞きしが如くせんといふ。我は舟人を顧みて、舟を要せば別に雇ふべければ、汝達は去留自在にせよといひて、暇を取らせつ。
 須臾《しゆゆ》にして波濤|洶々《きよう/\》の音漸く高く、風力の衝突は頻りに全屋を撼《うごか》せり。我とポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]とは偕《とも》に戸外に出でゝ瞻望《せんばう》したり。時に夕陽は震怒したる海の暗緑なる水を射て、大波の起る處雪花亂れ翻《ひるがへ》れり。地平線に近き邊には、層雲|堆《たい》を成して、稻妻の其間より閃發《せんぱつ》せるさま、幾箇の火山の噴坑を開けるに似たり。我等は忽ち二三の舟の紙上の黒點の如く彼雲に映ずるを見しが、忽ち又之を失へり。岸を噬《か》む水は、石に觸れて倒立し、鹹沫《しぶき》は飛んで二人の面を撲《う》てり。ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]の興は風浪の高きに從ひて高く、掌を抵《う》ちて哄笑し、海に對して快哉《くわいさい》を連呼せり。此興は我に感じ傳はりて、我は胸中の苦悶の天地の忿怒に壓倒せらるゝを覺え、亦ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]の聲に應じて叫びぬ。
 暮色は急に襲ひ至りぬ。我等は亭《あづまや》に入りて、當※[#「土へん+盧
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