Aチデス》たらんは、海の女王たらんことの崇高なるには若《し》かず。おもふに君の美妙を崇拜し給ふこと我に殊ならざるべければ、君はかしこより來る彼美《かのび》の呼び迎ふるをも辭《いな》み給はぬならん。こは識る所の酒亭《オステリア》の娘なり。共に往き給はずやといふ。われはポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]と少女《をとめ》に誘はれて、海に枕《のぞ》める小家に入りぬ。酒は旨《うま》し。友は善く談ぜり。誰かポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]が軽快なる辯と怡悦《いえつ》の色とを見て、その厭世の客たるを知り得ん。我は共に坐すること二時間ばかりなりしに、舟人は急に我を呼びて歸途に就かんことを促せり。こは颶風《ぐふう》の候《しるし》ありて、岸區《リド》とヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]との間なる波は、最早小舟を危うするに足るが故なりと云へり。ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]は耳を欹《そばだ》てたり。何とか云ふ。颶風は我が久しく觀んことを願ひしところなり。「アバテ」も暫く我と共に留まり給へ。日の暮るゝまでには凪《な》ぐべし。若《もし》凪がずば、枕をこの茅《かや》屋根の下に安くして、波の音を聞くこと、昔子もり
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