Nすこと、一の寺院の如くなりき。フラミニア[#「フラミニア」に傍線]の姫の詞は、此時|端《はし》なく憶ひ出されぬ。詩人は神の預言者にあらずや。何故に詩人は神の徳を頌せんことを勉めざる。嗚呼、我は忽ち此詞の眞理なることを感得せり。不滅なる詩人の心は不滅なる神をこそ詩料とすべきなれ。目前の榮華は泡沫の五彩の色を現ずるに異ならずして、その生ずる時はやがてその滅する時なり。われは忽ち興到り氣|奮《ふる》ふを覺えしに、忽ち又興散じて氣衰ふるを覺え、悄然として舟に上り、大海に臨める岸區《リド》に着きぬ。
 海はやゝ浪立てり。われは佇立《ちよりつ》してアマルフイイ[#「アマルフイイ」に二重傍線]の灣《いりえ》を憶ひ起しつゝ、目を轉じて身邊を顧みれば、波のもて來し藻草と小石との間に坐して、草畫を作れる男あり。われは其姿に些《ちと》の見おぼえあるをもて、徐《しづか》にこれに近づくほどに男は身を起して此方《こなた》に向へり。こは我がヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に來てよりの新相識の一人なる貴族の少年にて名をポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]といふものなりき。
 ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]のいふや
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