ヘ一の大いなる墓田ありき。外國人《とつくにびと》と新教徒とは、この水と水とに挾まれたる一帶の土の、殆ど時々刻々洗ひ去らるゝ状《さま》をなせる處に埋めらるゝなり。白き人骨は沙《いさご》の表に露《あらは》れて、これが爲めに哭《こく》するものは、只だ浪の音あるのみ。
漁父の危きを冒して沖に出でたるとき、その妻そのいひなづけの妻などの、坐して夫の舟の歸るを待つは、此岸區なりといふ。颶風《ぐふう》の勢少しく挫《くじ》けたるとき、こゝに坐したる女子《をみなご》の、彼恢復せられたるエルザレム[#「エルザレム」に二重傍線]中の歌を歌ひ、耳を傾けて夫の聲のこれに應ずるや否やを覗《うかゞ》ひしこと幾度ぞ。さるをその懷《なつ》かしき夫の聲の終に應ずることなく、可憐の女子の獨り不言の海に對して口は復た歌ふこと能はず、目は空しく沙上の髑髏《されかうべ》を見、耳は徒らに岸打浪《きしうつなみ》の音を聞きて、暮色の漸く死せる古都を掩《おほ》ふを覺えしこと又幾度ぞ。
この暗澹たる畫圖は我心目に上りて消えず、我情調はこれに一層の悲慘の色を添へんとせり。わが對するところの自然は、無常と歴劫《れきごふ》との觀を惹《ひ》き
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