、。こゝにて君と相見んとは思ひ掛けざりき。この怒り易く恃《たの》み難きハドリア[#「ハドリア」に二重傍線]の海の、能く君を招き致したるは、唯だその紅波白浪の美あるがためか、そも/\別に美なるものありて、この岸區に住めるにはあらざるかといひぬ。我等は互に進み寄りて手を握りつ。
人の語るを聞くに、ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]は畫才ありて資力なき人なり。その人に對する言語動作は活溌にして、間々放縱なるかとさへ疑はるゝ節あれども、まことはいみじき厭世家なり。言ふところはドン・ホアン[#「ドン・ホアン」に傍線]を欺《あざむ》く蕩子《たうし》なる如くにして、まことは聖《サン》アントニウス[#「アントニウス」に傍線]の誘惑を峻拒《しゆんきよ》する氣概あり。無邪氣なること赤子の如く、胸中一事を包藏するに堪へざるものに似て、智を恃《たの》める士流は遂にその底蘊《ていうん》を窮むること能はず。こは深き憂に中《あた》れるが爲めなるべけれど、その憂は貧か戀か、そも/\別に尋常《よのつね》ならざる祕密あるか。これを知るもの絶て無しとぞ。われは人の若語《しかかた》るを聞きて、かねてよりポツジヨ[#「ポツジヨ
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