アのわたりの景色を觀んとやし給ふといふ。否、舟あるこそ幸なれ、さらば直ちにヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に往かんと答へつ。我心は何故とも知る由なけれど、唯だ推され輓《ひ》かるゝ如くなりき。われは埠頭《ふとう》におり立ちて、行李を搬《はこ》び來らしめ、目を放ちて海原を望み見たり。さらば/\我故郷。われは足の此土を離れんとするに臨みて、いよ/\新なる世界の我が爲めに開くべきを感ぜり。北伊太利國の自然の全く相|殊《こと》なるべきは始より疑ふべからず。就中《なかんづく》ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]は盛飾せる海の配偶にして、他の伊太利諸市と全く其趣を異にすべきこと明なり。我が乘るところの此舟は、即ちヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の舟にして、翼ある獅子の旗は早く我が頭上に翻《ひるがへ》れり。帆は風に※[#「厭/食」、第4水準2−92−73]《あ》きて、舟は忽ち外海に※[#「馬+央」、131−上段−13]《はし》り出で、我は艙板《ふないた》の上に坐して、藍碧なる波の起伏を眺め居たるに、傍に一少年の蹲《うづくま》れるありて、ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の俚謠《ひなうた》を歌
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