モ。其歌は人生の短きと戀愛の幸あるとを言へり。こゝに大概《あらまし》を意譯せんか。其辭にいはく。朱《あけ》の唇に觸れよ、誰か汝の明日《あす》猶在るを知らん。戀せよ、汝の心の猶|少《わか》く、汝の血の猶熱き間に。白髮は死の花にして、その咲くや心の火は消え、血は氷とならんとす。來れ、彼|輕舸《けいか》の中に。二人はその蓋《おほひ》の下に隱れて、窓を塞ぎ戸を閉ぢ、人の來り覗《うかゞ》ふことを許さゞらん。少女《をとめ》よ、人は二人の戀の幸を覗はざるべし。二人は波の上に漂ひ、波は相推《あひお》し相就《あひつ》き、二人も亦相推し相就くこと其波の如くならん。戀せよ、汝の心の猶|少《わか》く、汝の血の猶熱き間に。汝の幸を知るものは、唯だ不言の夜あるのみ、唯だ起伏の波あるのみ。老は至らんとす、氷と雪ともて汝の心汝の血を殺さん爲めに。少年は一節を唱《うた》ふごとに、其友の群を顧みて、互に相頷けり。友の群は劇場の舞群《ホロス》の如くこれに和せり。まことに此歌は其辭卑猥にして其|意《こゝろ》放縱なり。さるを我はこれを聞きて輓歌《ばんか》を聞く思ひをなせり。老は至らんとす。少壯の火は消えなんとす。我は尊き愛の膏
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