ネかば》して處々蔭多からしめたり。室は假の庭園なり。薄片鐵《ブリキ》を塗りて葉となしたる蔓艸《つるくさ》は、幾箇のさゝやかなる亭《あづまや》に纏ひ附きて、その間には巧に盆栽の橘柚《オレンジ》等を排《なら》べたり。亭の前なる梢には剥製の鸚鵡《あうむ》の止《と》まりたるあり。冷なる風は窓より入りて、自奏器の樂聲人の眠を催さんとす。
 わが此裝置を一瞥し畢《をは》りし時、彼のベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]に肖《に》たる男はこなたに向ひて足の運び輕げに歩み來たり。われは思慮を費すに遑《いとま》あらずして、近き亭《あづまや》の内に濳みしに、男は面《おもて》に笑《ゑみ》を湛へて閾上《よくぢやう》に立ち留まりぬ。その面は恰も我方へ眞向《まむき》になりたるが、われはそのまがふ方なきベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]なることを認め得たり。渠《かれ》は隣なる亭に歩み入り、長椅《ヂノワ》に身を投げ掛けて、微かに口笛を鳴し居たり。我胸裏には萬感|叢起《さうき》せり。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]こゝに在り。我と他《かれ》と咫尺《しせき》す。われはかく思ふと共に、身うちの悉く震《ふる》
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