闍盾スり。
奧の詰《つめ》なる室には、少年紳士等打寄りて撞球戲《たまつき》をなせり。婦人も幾人《いくたり》か立ち雜《まじ》りたるに、紳士中には上衣を脱ぎたるあり。われは初め此社會の風儀のかくまで亂れたるをば想ひ測《はか》らざりしなり。入口の戸に近く、此方《こなた》に背を向けて撞杖《キユウ》を揮へる丈《たけ》高き一男子あり。今の撞《つ》きざまや巧なりけん、人々喝采せしに、前《さき》に我に骨牌を勸めし少女も彼男子の面を覗きて、笑みつゝ何事をかさゝやきたり。男は振り向きざまにその頬に接吻し、女は嬌嗔《けうしん》してその男を打てり。われは遙に彼男の横顏を望み見て慄慴《りつせふ》せり。そはその餘りにベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]に肖《に》たるが爲めなり。われは進みてこれに近づくべき膽力なかりき。されどその眞のベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]なりや否やを知らんことの願はしければ、傍にほの暗き室の戸の開きありたるを見て、我より窺ふべく彼より見るべからざらしめんために、壁に沿ひて徐《しづか》に歩み、そとこれに進み入れり。天井には紅白の硝子燈を弔《つ》りたれど、わざと明闇|相半《あひ
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