オさを歌はん、汝が我心を動す所以《ゆゑん》を歌はん。言ふこと莫《なか》れ、汝が心の痍《きず》は尚血を瀝《したゝ》らすと。針に貫《つらぬ》かれたる蝶の猶その五彩の翼を揮《ふる》ふを見ずや。落ちたぎつ瀧の水の沫《しぶき》と散りて猶|麗《うるは》しきを見ずや。これはこれ詩人の使命なり。この世は束《つか》の間《ま》の夢なり。あの世に到らんには、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]も我も淨《きよ》き魂《たま》にて、淨き魂は必ず相愛し相憐み、手に手を取りて神のみまへに飛び行かむ。
 氣力と希望とは再び我胸に入り來れり。わが此より即興詩人として世に立たんは、なか/\に樂しかるべき事ぞと思ひ返されぬ。只だ猶心に懸るは、恩人なる貴人《あてびと》の思ひ給はん程|奈何《いかゞ》なるべきといふ事なり。彼人はわれ舊に依りて羅馬にありて書《ふみ》を讀めりとおもひ給ふならん。彼人のわが都を逃れしさまと我新|境界《きやうがい》とを聞き知り給はんには、果して何とか言はるべき。われは今宵を過ごさで書を裁して、人々に我未來の事を認め許されんことを請《こ》ふことゝなしたり。我書には、子の母に言はんが如く、些《いさゝか》の
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