Uふことなく有の儘に、我とアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]との中を語り、我が一たび絶望の境に陷りて後、今又慰藉を自然と藝術とに求むるに至れる顛末《てんまつ》を敍して、さて人々の憐を垂れてわが即興詩人となることを許されんを願ひぬ。われはその答を得ん日までは、敢て公衆のために歌はざるべしと誓へり。これを書く時、涙は紙上に墜《お》ちて斑《まだら》をなし、われは心の中に答書の至らんこと一月の間にあらんことを祈るのみなりき。書き畢《をは》りて、われは久し振にて心安く眠に就きぬ。
 翌日フエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]はとある横町なる賃房《かしべや》に移り、己れは猶さきの獨逸《ドイツ》宿屋なる、珍らしき山と海との眺ある一間に留まりぬ。われは聚珍館《しうちんくわん》(ムゼオ、ボルボニイコ)、劇場、公苑など尋ねめぐりて、未だ三日《みか》ならぬに、早く此都會の風俗のおほかたを知ることを得たり。

   考古學士の家

 或日|房奴《カメリエリ》は我に一封の書《ふみ》をわたしたり。披《ひら》きて讀めば、博士マレツチイ[#「マレツチイ」に傍線]と夫人サンタ[#「サンタ」に傍線]との案内状にして、
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