閧ト》の首《かうべ》を繞《めぐ》りてひらめき飛べり。
山塞
友を殺し、女に別れ、國を去りて、兇賊の馬背に縛《いまし》められ、カムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の廣野を馳《は》す。一切の事、おもへば夢の如く、その夢は又怪しくも恐ろしからずや。あはれ此夢いつかは醒《さ》めん、醒めてこの怖るべき形相《ぎやうさう》は消え淪《ほろ》びなん。心を鎭めて目を閉づれば、冷《ひやゝか》なる山おろしの風は我頬を繞《めぐ》りて吹けり。
山路にさしかゝると覺しき時、騎者《のりて》は背後なる我を顧みて詞をかけたり。程なく大母《おほば》の蔽膝《まへだれ》の下に息《やす》らふべければ、客人も心安くおぼせよ。良き馬にあらずや。この頃|聖《サン》アントニオ[#「アントニオ」に傍線]の禳《はらひ》を受けたり。小童《こわつぱ》の絹の紐もて飾りて牽《ひ》き往きしに、經を聽かせ水を灌《あび》せられぬれば、今年中はいかなる惡魔の障碍をも免るゝならん。
岩間の細徑に踏み入る頃、東の天は白みわたりぬ、連《つれ》なる騎者馬さし寄せて、夜は明けんとす、客人の目疾《めやみ》せられぬ用心に、涼傘《ひがさ》さゝせ申さんと
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