閨B我馬の尾に縋《すが》りて泅《およ》がんこともたやすからねば、鞍の半を分けて參らすべし。渠は我を後《うしろ》ざまに馬の脊に掻き載せて、おのれは前の方に跨り、水に墜《おと》さぬ用心なりとて、太き綱を我胸と肘《ひぢ》とのめぐりに卷きて、脊中合せにしかと負ひたり。我には手先を動かす餘地だになかりき。逞ましき馬は前脚もて搜《さぐ》りつゝ流に入りしが、水の脇腹に及ぶころほひより、巧に泳ぎて向ひの岸に着きぬ。渠《かれ》は河ごしは濟みたりと笑ひて、綱を弛《ゆる》むる如くなりしが、こたびは我脊を緊《きび》しく縛りて、その端を鞍に結《ゆ》ひつけ、鞍をしかと掴みておはせ、墜ちなば頸の骨をや摧《くじ》き給はんといひて、靴の踵を馬の脇に加ふれば、連なる男も同じく足をはたらかせたり。かくて二匹の馬三個の人は、弦《つる》を離れし矢の如くカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の原野を横ぎりたり。前なる男の長き髮は、風に亂れて我頬を拂へり。頽《くづ》れたる家の傍、斷えたる水道の柱弓《せりもち》の畔《ほとり》を、夢心に過ぎゆけば、血の如く紅なる大月《たいげつ》地平線より輾《まろが》り出で、輕く白き靄《もや》騎者《の
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