A彼媼の心根こそやさしけれ。三人ひとしくさし伸ぶる手を待たで、われは財布の底を掴みて振ひしに、焚火に近き※[#「匚<扁」、第4水準2−3−48]石《ひらいし》の上に、こがねしろかね散り布けり。眞物《ほんもの》ぞと呼びつゝ、人々拾ひ取りて勿體なき事かな、盜人などに取られ給はゞいかにし給ふといふ。われ。貨物《しろもの》はそれ丈なり。疾《と》く我命を取り給へ。生甲斐なき身なれば毫《すこ》しも惜しとはおもはず。甲。思ひも寄らぬ事なり。我等はロツカ・デル・パアパ[#「ロツカ・デル・パアパ」に二重傍線]に住める正直なる百姓仲間なり。同じ教の人を敬ふ基督の徒なり。酒少し殘りたり。これを飮みて、かく怪しき旅し給ふ事のもとを明し給へ。われ。そはわが祕事《ひめごと》なり。かく答へて我は彼瓶を受け、燥《かわ》きたる咽を潤したり。
三人は何事をかさゝやきあひしが、小男は嘲《あざ》み笑ふ如き面持して我に向ひ、煖《あたゝか》き夕のかはりに寒き夜をも忍び給へといひて立ちぬ。渠《かれ》は驅歩《かけあし》の蹄の音をカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の廣野に響かせて去りぬ。甲。いざ客人、船を待ち給はんは望なき事な
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