カたるときの用心には腰なる拳銃あり。丙。この小刀《こがたな》も馬鹿にはならぬ貨物《しろもの》なり。(かの身材小さき男は冰《こほり》の如き短劍を拔き出だして手に持ちたり。)乙。早く※[#「革+室」、67−下段−23]《さや》に納めよ。年若き客人は刃物は嫌ひなるべし。客人、われ等に逢ひ給ひしは爲合《しあは》せなり。若し惡棍《わるもの》などに逢ひ給はゞ、素裸にせられ給はん。金あらば我等にあづけ給へ。
われは今三人の何者なるかを知りたり。我五官は鈍りて、我性命は價なきものとなりぬ。諸君よ、わが持てる限の物をば、悉く贈るべし、されどおん身等を※[#「厭/食」、第4水準2−92−73]《あ》かしむるに足らざるこそ氣の毒なれと答へて、われは進寄りつゝ、手を我|衣兜《かくし》にさし籠《こ》みたり。われは兜兒《かくし》の中に猶|盾銀《たてぎん》二つありしを記したり。而るに我手に觸れたるは、重みある財布なりき。抽《ひ》き出して見れば、手組《てあみ》の女ものなるが、その色は曾てアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が媼の手にありしものに似たり。落人《おちうど》の盤纏《ろよう》にとて、危急の折に心づけたる
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