tせる五指の間に牢《かた》く拳銃を攫《つか》みたり。
わが此不慮此不幸の全範圍を感ぜしは、酒店の人の罵り噪《さわ》ぎつゝ走り寄りアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と媼との我前に來るを見し時なりき。わがベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]と叫びて、その躯《からだ》に抱き付かんとするに先だちて、姫は早くもその傍に跪き、鮮血湧き出づる創口を押へたり。姫はかく我友をいたはりつゝ、血の色全く失《う》せたる面を擧げて、我を凝視せり。媼は我臂を搖り動かして、疾《と》く此場をと呼べり。
われは胸裂くるが如き苦痛を覺えき。われは叫び出せり。思ひ掛けぬ怪我なり。殺さんと欲せしは他《かれ》なり。銃は他の我にわたしゝなり。われは身を脱せんとして撥條《はつでう》に觸れたり。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]聞き給へ。我等二人は命に懸けて君を慕ひしなり。君がために血を流さんことは、われも厭はざるべきこと、我友と同じ。われはおん身が一言を聞きて去らん。おん身は我友を愛し給ひしか、我を愛し給ひしか。
友の介抱に餘念なき姫は、詞のあやもしどろに、疾く往き給へといひて、手を揮《ふ》りたり。姫は往き給
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