ゥばんとならば叫べ、男らしく立ち向ふ心なくば、人をも呼べ、この兩腕の縛らるゝ迄には、汝が息の根とめでは置かじ、兵《えもの》はこゝにあり、我に恥ある殺人罪を犯させじとおもはゞ疾く來れといひつゝ、拳銃一つ我手にわたし、われを廊の外に拉《ひ》き行かんとす。われは遞與《わた》されたる拳銃を持ちながら、猶身を脱せんとして爭へり。友。彼君は淺はかにも汝に靡《なび》きしならん。汝は誇らしくも、そを我に、そを羅馬の民に示さんとす。われを出し拔きしは猶忍ぶべし。いかなれば我に弔辭《くやみ》めきたる書を贈りて、重ねて我を辱めたる。われ。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]、そは皆病める人の詞なり。先づその手を弛《ゆる》めずや。われは力を極めて友の體を撥《は》ね退けたり。
 その時われは銃聲の耳邊に轟くを聞きたり。我右臂には衝動を感じたり。烟は廊道《わたどのみち》に滿ちたり。われは又叫ぶに似て叫ぶにあらざる一種の氣息を聞きたり。この氣息の響は我耳を襲ふよりは寧ろ我心を襲ひき。發したるは我手中の銃にして、黒く數石を染めたる血に塗《まみ》れて我前に横れるは我友なり。われは喪心者の如く凝立して、拘攣《こうれん
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