T線]の伽藍《がらん》には中央なる大穹窿、左右の小穹窿、正面の簷端《のきば》、悉く透き徹《とほ》りたる紙もて製したる燈籠を懸け連ねたるが、その排置いと巧なれば、此莊嚴なる大廈は火※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]の輪廓もて青空に畫き出されたるものゝ如くなり。人の群れ集《つど》へること、晝の祭の時にも増されるにや、車をば並足《なみあし》にのみ曳かせて、僅に進む事を得たり。神使の橋の上より、御寺の全景を眺むるに、燈の光は黄なるテヱエル[#「テヱエル」に二重傍線]河の波を射て、遊び嬉《たのし》む人の限を載せたる無數の舟を照し、爰《こゝ》に又一段の壯觀をなせり。樂の聲、人の歡び呼ぶ聲の滿ちわたれるピエトロ[#「ピエトロ」に傍線]の廣こうぢに來りし時、火を換ふる相圖《あひづ》傳へられぬ。御寺《みてら》の屋根々々に分ち上したる數百の人は、一齊に鐵盤中なる松脂環飾《やにのわかざり》に火を點ず。小き燈のかず/\忽ち大火※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]と化したる如く、この時|聖《サン》ピエトロ[#「ピエトロ」に傍線]の寺は羅馬の大都を照すこと、いにしへベトレヘム[#「ベ
前へ 次へ
全674ページ中270ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング