ユきしはナポリ[#「ナポリ」に二重傍線]にての催しなりき。媼はその頃より姫のほとりを離れずといふ。語り畢りて媼は、姫の才あり智ありて、敬神の心いよ/\深きを稱ふること頻りなりき。
 旅館を出でしは祝射《しゆくしや》の眞盛《まさかり》なりき。玄關よりも窓よりも、小銃拳銃などの空射をなせり。こは精進日の終を告ぐるなり。寺々の壁畫を覆《おほ》へる黒布をば、此聲とゝもに截《き》りて落すなり。鬱陶しき時はけふ去りて、蘇生祭のうれしき月はあすよりぞ來るなる。その嬉しさはアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と媼とを祭見に誘ひ得たるにて、又一層を加へたり。

   蘇生祭

 祭の鐘は鳴りわたれり。僧官《カルヂナアレ》を載せたる彩車は聖《サン》ピエトロ[#「ピエトロ」に傍線]の寺に向ひて奔《はし》りゆく。車の後なる踏板には、式の服着たる僮僕《しもべ》あまた立てり。外國人の車馬、ところの子女の裙屐《くんげき》に、狹き巷の往來はむづかしき程になりぬ。神使の丘の巓《いたゞき》には、法皇の徽章、聖母《マドンナ》の肖像を染めたる旗閃き動けり。ピエトロ[#「ピエトロ」に傍線]の辻には樂人の群あり。道の傍には露
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