ニ見えたり。物語のはし/″\より推するに、姫が過ぎ來し方のおほかたは明かになりぬ。姫は西班牙《スパニア》に生れき。父も母も彼國の人なり。穉くて羅馬に來つるに、ふた親はやく身まかりて、頼るべき方もなし。猶太の翁ハノホ[#「ハノホ」に傍線]は西班牙に旅せしころ、彼親達を識りつれば、孤兒を引き取りて養へりしに、故郷なる某《それ》の貴婦人あはれがりて迎へ歸り、音樂の師に就きて學ばしめき。その頃某の貴公子この若草手に摘まばやとてさま/″\のてだてを盡しゝに、姫の餘りにつれなかりしかば、公子その恨にえたへで、果はおそろしき計《はかりごと》をさへ運《めぐ》らしつ。その始末をば媼深く祕めかくす樣なれど、姫の命も危《あやふ》かるべき程の事なりきとぞ。姫は彼公子に索《たづ》ね出されじとて、再び羅馬に逃れ來たり。かくて昔のやしなひ親にたよりて、人目少き猶太廓《ゲツトオ》に濳み居たるは、一年半ばかり前の事といへば、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]が逢ひしは此時なり。幾《いくばく》もなくして彼公子身まかりぬ。姫はこれより一身をミネルワ[#「ミネルワ」に傍線]の神(藝術の神)に捧げまつりて、その始て桂冠を
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