tイレンチエ[#「フイレンチエ」に二重傍線]の畫廊に往きて君とけふ物語れることを想ふべし。われは常に面白きことに逢ふごとに、我友のその樂を分たざるを恨めり。これも旅人の故郷を偲《しの》ぶたぐひなるべし。我は姫の手に接吻して、戲に。この接吻をばメヂチ[#「メヂチ」に傍線]のヱヌス[#「ヱヌス」に傍線]に傳へ給へ。姫。さては我にとてにはあらざりしか。我は決して私《わたくし》することなかるべしといひぬ。我は分れて一間を出でしとき夢みる人の如くなりき。戸の外にて家の媼《おうな》に出で逢ひ、心の常ならぬけにやありけむ、われその手を取りて接吻せしに、これは善き性《さが》の人なるよとつぶやくを聞きつ。
最後の謝肉祭の日をば、飽く迄樂まむと思ひぬ。唯だアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と別れむことは、猶|現《うつゝ》とも覺えず。又逢はむ日は遙なる後にはあらで、明日の朝にはあらずやとおもはる。假面をば被りたらねど、「コンフエツチイ」の粒|擲《な》ぐることは、人々に劣らざりき。道の傍なる椅子には人滿ちたり。家ごとの窓よりも人の頭あらはれたり。車のゆきかふこと隙間なく見ゆるに、その餘せる地にはうれし
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