B露肆の主人は聞|畢《をは》りて。さなりさなり。おのれの無學なる、固より此の如き大家を囘護せん力は侍らず。されど君もまだ歳若ければ、此の如き大家を非難すべきにあらざるべし。おのれはえ讀まぬものなり。君は未だ讀まざるものなり。されば褒むるも貶《けな》すも、遂に甲斐なき業ならずや。唯だ訝《いぶ》かしきは、君はまだ讀まぬ書をいひおとし給ふことの苛酷なることぞといふ。われは心に慙《は》ぢて、我詞の全く師の口眞似なるを白状したり。主人も我が樸直《すなほ》なるをや喜びけん、書を取りて我にわたしていふやう。好し、一「パオロ」にて君に賣らん。その代には早く讀み試みて、本國の大詩人をあしざまに言ふことを止め給へ。
神曲、吾友なる貴公子
何等の快事ぞ。神曲は今我書となりぬ。我が永く藏することを得るものとなりぬ。ハツバス・ダアダア[#「ハツバス・ダアダア」に傍線]が非難をば、我始より深く信ぜざりき。わが奇を好む心は、かの露肆《ほしみせ》の主人が言に挑《いど》まれて、愈※[#二の字点、1−2−22]|熾《さかん》になりぬ。われは人なき處に於いて、はじめて此卷を繙《ひもと》かん折を、待ち兼ぬるのみな
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