T線]の名譽を説き出しつ。ハツバス・ダアダア[#「ハツバス・ダアダア」に傍線]には無下《むげ》にいひけたれたるダンテ[#「ダンテ」に傍線]の名譽を。
 露肆の主人のいふやう。この卷は一葉ごとに一場の説教なり。これを書きしは、かう/″\しき預言者にて、その指すかたに向ひて往くものは、地獄の火※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]を踏み破りて、天堂に抵《いた》らんとす。若き華主《だんな》よ。君はまだ此書を讀み給ひし事なきなるべし。然らずば君一「スクウド」をも惜み給はぬならん。二「パオリ」は言ふに足らざる錢なり。それにて生涯讀み厭くことなき、伊太利第一の書を藏することを得給はゞ、實にこよなき幸ならずや。
 嗚呼、われは三「パオリ」をも惜まざるべし。されど我手中にはその錢なきを奈何せん。かの伊蘇普《エソオポス》が物語に、おのがえ取らぬ架上の葡萄をば、酸《す》しといひきといふ狐の事あり。われはその狐の如く、ハツバス・ダアダア[#「ハツバス・ダアダア」に傍線]に聞きたるダンテ[#「ダンテ」に傍線]の難を囀《さへづ》り出し、その代にはいたくペトラルカ[#「ペトラルカ」に傍線]を讚め稱へき
前へ 次へ
全674ページ中119ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング